先日、大阪の加藤先生のお話をちょっとしました。
加藤先生、もうお顔を知っている方も大分減ってしまったでしょうけれど、そのお名前は解説書の最後のページにずっと残っています。
私が杖を始めた時には加藤先生はとっくにお爺さんでしたけれど、
「ウチバリ(引落打)は、腰くらいまで打てば十分落ちる」
と言い、実際に「ほらこの通り」とやって見せて下さって、それを見た私は「なんやこの爺さん!!」と大層びっくりしたものでした。
なんやも何も、杖道範士8段・神道夢想流免許皆伝のお爺さんなんですが。
さて、その加藤先生が晩年に
「私はいまだに本手打すら満足にできない」
なんてことをおっしゃったそうで、加藤先生にそんなこと言われたら我々がやっているのは本手打のような本手打でない何か別のモノってことになりそうで、考えるだにおっかない話です。
求めるレベルが高くていらっしゃるなと思うし、段位とか称号に関係なく武道に終わりはないんだなと思います。
この手の「基本打をしっかりやれ」的なお話はほかの先生方もされていて、どちらもお亡くなりになった先生ですが、東京の松村先生は「返突を前後左右どこにでも出せるようになろうね」とおっしゃってましたし、同じく東京の松井先生は「引落打がちゃんとできれば範士8段も楽勝」的なことをおっしゃっていた記憶があります。
松井先生はさらに「私たちは制定型の議論をするときに、本身の刀を持ち込んで、実際に打ち合って、剣道の先生が『あなたたち真剣なんか持ち込んで正気ですか』って言う中、喧々諤々やって、それでようやく決めたんですよ、それをあなたたちはいい加減な稽古をしていて、本当に腹が立つ」的なお怒りを漏らしてましたっけねえ。
なんにしても「基本が大事」なのはどこの何でも変わらないし、初段には初段の基本があり、8段には8段の基本があって果てはない、ってことでしょうね。
気が付けば20年も杖道をやってて、色んなお話がたまってきてますね。